超主観的建築のための書店案内

建築の本が売っている主な東京界隈の書店を紹介します。普通に紹介してもあまりつまらないと思い語り口を多少変えてみましたが、読みづらい、普通の文体にしてくれ、もっと真面目に紹介してくれなどの要望はコメント等にて受け付けます。徐々に増やしていきたいと思っています。

○評価基準について
新刊書と古本を取り扱う書店について分けて評価軸を設定しています。(*あくまで建築の本が多いとか少ないとかです)
古本屋にしては多いとか、新刊書を取り扱う書店にしては少ないとかその程度の事ですが……同じ評価軸にしてしまったらもちろん大型書店がその冊数は多いですからね。
例えば古本屋★★★≠新刊書店★★★です。(総本=全体的な建築本の冊数、和書=建築和書の冊数、洋書=建築洋書の冊数、総合=総合評価。店内の快適性も含めた全体的な評価。なお古本屋については総本数のみの評価です)
評価は生ものです。私の主観ですので変わっていきます。


東京駅近辺
八重洲ブックセンター《新刊書》
総本 ★★★★
和書 ★★★★
洋書 ★★★
総合 ★★★★

東京駅八重洲南口を出るとその姿を現す書店です。これがかの有名な八重洲ブックセンターであると同時に建築の本の数の期待値も高いでしょうか。しかし店内に入ってみると何と建築の書棚は七階にあることに気づき間もなくエスカレータも四階までしか動いていないことに戦慄を覚えます。そして頼みの綱のEV、しかも1階から4階まではノンストップの高速EVではないではないか、これで助かったと思った瞬間その運転効率の微妙な遅さにがっかりしたりしなかったりします。ここまで建築の話ではあるがその本質的部分には一切触れていませんしこれではYBCの良さはないのではないかと一瞬の懐疑の念を抱くことでしょう……しかし七階に上がった瞬間見えたのは建築コーナーに付随して付けられたかのようにあるオアシス、そう八重洲ラウンジです。それは普通書店において座って選書するなど言語道断贅沢過ぎるといった概念を覆すような珠玉の空間であり、そのオアシスと呼んだ名の通り冷水と常温水が飲み放題というまさに建築を学んでいて良かった、他のフロアじゃなくて良かったと思わせる空間となっていることは間違いないでしょう。(ただし、日時を見誤ると混んでいます。おススメは平日)本の書数は申し分なく雑誌のバックナンバーも充実し鹿島出版会だけの書棚(SD選書など)もあります。

丸善 丸の内本店《新刊書》
総本 ★★★★
和書 ★★★★
洋書 ???<調査中。多分少ないです。>
総合 ★★★★

山手線からその全貌が窺え東京駅丸の内北口を出るとすぐ、八重洲ブックセンターと対角線上に位置するオアゾの中、高級感漂わせる店構え、これは入っていいのかしらんと思いつつも、最高級の持成しを受けるに違いないであろうと夢を膨らませ恐る恐る入店してみると、そこには眩いほど広々した店内が存在しているのです。エスカレータでスイスイと三階へ上るとそこには美術・デザイン、各種文庫、PC関連といった書籍が建築と同一平面上のフラットな空間において享受でき、その「Book Museum」というコンセプトを見事に全うしています。ただし建築書籍は十二分にあるのですが、書棚が高いために上方の本は脚立を使わなければならないという苦行を強いられますが、しかし元よりこれは書籍数が多いという事を明示しているに他ならないのであり、何ら文句の付けようがありません。

INAXブックギャラリー《新刊書》
総本 ★★★
和書 ★★★
洋書 ★★
総合 ★★★

銀座中央通りをテクテクと東京駅方面へ向かうと建築関係者なら必ずやその興味を惹かれるINAXの青い看板に出会い、そしてふと近づいてみるとギャラリーと本屋が同時に存在している事実に驚愕し、夢のような空間へと誘われるのです。INAX出版の書籍はもちろんインテリア、デザイン関連書の凝縮された空間は銀座のサラリーマンやOLを虜にしてやまず、元よりギャラリーの多いこの界隈をより格調高いものにしています。(ギャラリーエントランスがまた非常にその夢空間を表現しているのです)



神保町

明倫館《古本》
総本数★★★★

入口からすぐ見える、回り込むように下階へと繋ぐ階段を降ります。(ここで注意:稀にみる原広司に憧れた、またはそうでなくとも数学物理が大好き、そして英語が話せる偉人たるや否やは1階も存分に楽しむことができるでしょう。)降りる途中に見える平積みにされた建築の本を見るだけで既に興奮するに値します。降りて棚を除くとそのラインナップは実に豊富であるだけでなく名著の多さ、見事に値段設定された本の数々に驚愕しつつ何故今まで新品を買っていたのだろうと自責の念に苛まれます。(またHPを一見すればそのネット販売の充実ぶりにも感嘆の声を出す事でしょう)

村山書店《古本》
総本数★★★

古書は安いけど本の状態が悪くて気になる……読書意欲の減退……そんな時、村山書店の存在が非常に大切です。店外の書棚も魅力的なのですが、注目すべきは店内の良書の多さ。大きな値引きはされていない物も多いがそれでもその状態の良さと、新書を買うという怠慢行為に比べてはるかに価値のある高尚な買物であることに間違いなく、そしてもし超特価値引き品を見つけた時は、もはや設計課題を終えた時のそれと同等、いやそれ以上の歓喜と感動を味わうことでしょう。(名著が眠っています。確認する限り、太田博太郎の日本建築史序説。レイナー・バンハムの第一機械時代の理論とデザインなど……2009年8月現在)

悠久堂書店《古本》
総本数★

店内にある美術カタログの多さに感嘆の声を上げながらも、ではもしかしたら建築の本も多いのではないかとその期待は大でありますが、そんなに多くありません。図版系の建築本、そしてバウハウス関係の本がちらほら伺えますがそれほど多くないので悪しからず……がしかし、建築に携わっていながらにしてまさか美術に興味がない、建築以外の芸術に興味がないといった人は皆無でありむしろ興味がありすぎてそちら関係に進んでしまう人も居るくらいであるからにしてこの美術カタログの多さ安さに満足感を得られずにはいられないのです。

小宮山書店《古本》
総本数★★

建築・美術本が2階になったという感動は以前から小宮山書店を利用していなければ味わえない感動であると同時に、建築に関係の深い、美術・写真・哲学・歴史などの知識を一緒に会得する必要性に駆られているといったような人はまず小宮山書店です。2階の建築書数はそこまで多くはないものの、一見する価値は十分に存在し、他の美術書とのリンク率は高いものになっているでしょう。

ボヘミアンズ・ギルド《古本》
総本数★★

これは芸術の匂いがするぞ、ともすると建築の匂いがするぞと感じさせる店名に誘われ、導かれそして入店すると、その期待をものの見事に全うしてくれるのです。建築書籍の数は月並みであるけれど、二階のブックギャラリーの存在が一際人々を魅了し続けています。(ネット購入も可)

源喜堂《古本》
総本数★★★

手に取らずして本の値段が分かるなんて言う奇妙奇天烈な現象が従前に存在したはずもなく、そこらの均一セールは分かるじゃあないかと言えばそうなのだけれど、それが懇切丁寧なものかと言われたらそうではないと感じる程度のものではなく、この源喜堂の値段の見せ方の丁寧さといったら他書店には空前絶後の事象であること間違いありません。更に洋書は欲しいが英語が読めず、果たしてこの本は一体何の建築なのだろうと思うことここにはあらず、その本の内容まで一瞥しただけで判断できるのであるから素晴らしいです。洋書や図版が多いですが、他の建築和書も多かれ少なかれ並んでいます。(ネット購入も可)

南洋堂書店《古本》《新刊書》
総本 ★★★★★
和書 ★★★★★
洋書 ★★★★★
総合 ★★★★★

本日は優雅に散策している時間がなく目的物を一軒目で入手したい、元より建築書籍の全てを知りたいなどという壮大な願望を持つ者が一目散に駆け込んでくる、建築本の宝庫、字義通りの総本山です。建築書籍だけで埋め尽くされた三フロアを見て動悸を起こすこと必至、建築の知の集積がここに存在しています。一、二階が和書、そして三階の洋書コーナでは時折洋書セールが開催されるのですが、その内容はブログで紹介する事多く、見逃した時のショックは想像するだけで戦慄と恐怖、もはやチェックを欠かすことはできないのです。ここで一つ注意を促すとしたら、外観のファサードの異様な重厚感とガラス面に心奪われ、足元にある格安書籍の籠の中見を一見もしないのは一世一代の大馬鹿野郎であること間違いないということでしょうか。私の知人は「西洋建築様式史:美術出版社」を二百円で手に入れるという偉業を成し遂げました。

三省堂 神保町本店《新刊書》
総本 ★★★★
和書 ★★★
洋書 ???<調査中 凡そ多くはありません>
総合 ★★★

神保町に来ておきながら、大型書店とは何と外道ななどと思っている人は黙殺してしまい、とっとと中へ入りましょう。さすが三省堂と思わせる品揃え、話題書を逃がさない配架の仕方、南洋堂との併用によってもはや手に入らない書籍は皆無と言っていい程の満足感を得ることができます。



その他
GA Gallery BOOKSHOP《新刊書》
総本 ★★★
和書 ★★★
洋書 ★★★★★
総合 ★★★★

副都心線北参道駅はまさにGA Galleryのためにできたのだと発狂する人はさて置いて、この建築関係者御用達のギャラリー、とは言っても所詮ギャラリーに付随してあるもの、書籍数はそんなに期待できませんなんてとんでもない、その建築洋書(海外雑誌など)の数はあの天下の南洋堂に迫る様相を呈しています。得てして私はギャラリーを鑑賞しに来たのかそれとも書籍を買いに来たのかと錯乱し、寧ろその書籍に満足して帰ることが多いことでしょう。

ギャラリー間《新刊書》
総本 ★★★
和書 ★★★★
洋書 ★★★
総合 ★★★★

建築関係者の間では国立新美術館サントリー美術館森美術館の織り成すアート・トライアングルではなくこのギャラリー間を加えてアート・スクウェアなんて呼称が付いていたりいなかったりします。(多分付いていません)そこにはTOTOの持つギャラリーとそしてブックショップが存在し、その品揃えも実に多彩なのであり、その効用はやはりGA Gallery、INAX Galleryと同様、またはそれ以上なのです。

紀伊国屋 新宿本店《新刊書》
総本 ★★★★
和書 ★★★★
洋書 ★★★
総合 ★★★
前川國男?本当に前川國男氏なのかと疑い、ならば行くしかないだろうと決意を固める建築学生が何人居た事でしょう、そしてエレベータガールの存在に何人が驚いた事でしょうか。しかしながら建築フロアに行くのに、行きはエスカレータがあるものの、帰りは少し混んだEVを使うことに少しの抵抗を覚えますが、品揃えはやはり申し分なく揃っているのです。

ジュンク堂 池袋本店《新刊書》
総本 ★★★★
和書 ★★★★ 
洋書 ★★★
総合 ★★★★
一階に集積する合理的に造られたレジ・カウンターを最終目標に掲げながら七階の建築フロアへ行きます。そしてその本棚を一瞥した時に、かつてこれほどまでに建築家別に丁寧に配架されていた事があっただろうかと、目を、そして自分を疑うのみにあらず、得てしてこれが最も分かりやすい配架方法なのではないかと関心するばかりなのです。建築家トランプが売っています。


オマケ ミュージアムショップや個人的に好きな店舗など(評価はしません。基本的に新刊です。建築の人は少なからず興味があると思いますので……)

オンサンデーズ on Sundaysワタリウム美術館内)
構成主義バウハウスなどと分類されている書店を嘗て見た事があったでしょうか、否、その天井まで伸びる棚のダイナミズムがもはや分類を超えて強襲してくるのです。カフェ併設により店名の如く日曜日を優雅に過ごすことができます。

NADiff a/p/a/r/t
表参道時代から親しみのある人はその閉店から恵比寿での開店までの間、発狂寸前の面持ちで待っていたことでしょうアート・ショップの総本山です。
『NADiff a/p/a/r/t』以外にもミュージアムショップとして組み込まれていたり、東京には全部で六店舗あります。詳しくはコチラ

青山ブックセンター 六本木店
青山にある本店ではなく六本木店に拘る理由といえばデザイン関連書籍の濃縮さにあるのです。大きな店舗は品揃えが良い、何でも揃うから良いなどいう怠慢な概念を覆すような店内の洗練さと配架位置の素晴らしさは一見の価値ありです。